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倫理委員会

平成25年度 第5回委員会審議平成25年11月26日

申請者 製剤主任 鳥山 陽子
2013−014
軽度催吐性リスクのがん化学療法に伴う悪心・嘔吐の観察研究
申請の概要
医療行為及び医学研究の目的
 現在、がん化学療法の制吐療法については、国内外のガイドラインが発表されている。催吐リスク別の分類において、軽度催吐リスクの化学療法に対する制吐療法についてはデキサメタゾン単剤が推奨されているが、質の高いエビデンスとなる研究が行われていないことから、専門家のコンセンサスにより策定されておりエビデンスに乏しい。実際、欧米においてガイドラインの遵守率は30%程度であり、多くの施設で過剰処方と考えられる5HT3受容体拮抗薬が習慣的に用いられていると報告されている。また、九州地区の国立病院機構の施設において事前アンケートを行ったところ、約50%の施設でガイドライン推奨のデキサメタゾン単剤ではなく、5HT3受容体拮抗薬が用いられていることが判明した。5HT3受容体拮抗薬は高価な薬剤であり、過剰処方は医療経済や副作用のリスクの面で問題である。本研究では、軽度催吐性抗悪性腫瘍薬投与に起因する急性及び遅発性の消化器症状(悪心・嘔吐、食欲不振)の発現状況、及び制吐療法の実態を調査する。
判定 承認 本報告は全員一致で承認された。
申請者 血管外科医師 久米 正純
2013−015
下肢虚血疾患登録(疾患レジストリ)による多施設共同研究システムの構築
申請の概要
医療行為及び医学研究の目的
 本研究は、被験者のカルテよりデータを抽出するため直接的な医療行為は一切行わない。
本研究の目的は、下肢慢性動脈閉塞症(peripheral arterial disease: PAD)に関する症例登録データベース(通称:Q-PAD)により、臨床情報を共有・解析することでPADの症状・治療を体系的に把握し良質な治療を実現することである。我が国におけるPAD症例は欧米と比較して少ないため、単一施設では症例数の蓄積に限界があり、正確な実態把握ができない可能性がある。そのため、九州大学第二外科血管グループの医師が所属する九州大学病院および関連施設における多施設共同システムを構築し、後向き解析による論文作成ツールの構築、前向き臨床研究へ向けた基盤整備、将来の国際共同治験への素地を確立する。
厚生労働省の臨床研究・治験活性化に関する検討会では、臨床研究を円滑に進めるための機能的なネットワーク構築の必要を述べており、重症虚血肢については全国規模のレジストリ構築が進められている。しかしながら、早期発見・早期治療が必要とされる下肢虚血疾患全体のレジストリ構築はなされておらず、進行疾患であり、両下肢の外科的手術という複雑なデータに対応するためには、リアルタイムに更新できる使いやすいシステムの構築が必要である。本学における多施設共同研究システム構築は、治験被験者リクルートおよび各種データの集約、開存率や生命予後、合併症発生率、術後遠隔成績などの解析に対応し、治験・臨床研究を加速させPAD研究の促進に貢献する。従って、今後はPADに関する症例登録データベースの構築は医療の質を向上するとともに患者にとって有益なシステムであることから、本研究の社会的意義は大きい。
 本研究における患者登録は、九州大学病院および関連施設にて行う、入力は九州大学と契約した人材派遣会社の職員が実施する。また、本システム運用管理(ユーザー登録等)は、九州大学革新的バイオ医薬創成学講座レジストリ事務局・コラボレーション供601で実施する。なお、本研究は、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の承認(許可番号:25-174)を受けている。
判定 承認 本報告は全員一致で承認された。
申請者 放射線科部長 宮嶋 公貴
2013−016
肝細胞癌に対するマイクロバルーン閉塞下TACEの治療成績に関する後視法的検討
申請の概要
医療行為及び医学研究の目的
 肝細胞癌の大部分は動脈血で栄養されているため、切除不能、経皮的治療困難の肝細胞癌に対しては、動注化学塞栓療法(TACE)が、施行されてきた。2000年代になり2編のRCT論文とメタアナリスでLip−TACE/TAEは切除不能肝細胞癌の予後向上に寄与することが証明された(1,2)。さらに、2012年に第10回日本臨床腫瘍学会で国立がん研究センター東病院より、切除不能肝細胞癌に対するアントラサイクリン系抗がん剤を使用した肝動脈化学塞栓療法(TACE)の日韓共同の前向き臨床試験の結果から、modified RECISTによる有効性評価の結果は、完全奏効42%、部分奏効31%、病勢安定17%で、奏効率は73%、進行までの期間は7.8カ月、全生存期間中央値は3.1年、1年生存率89.6%、2年生存率75.0%だった。日本と韓国の間で生存率に有意な差はなかった。2年生存率は75%という成績が得られたことが明らかになった結果から、TACEは切除不能肝細胞癌に対する標準治療と見なしうると報告された。科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインの治療アルゴリズムでは肝障害度AもしくはBで3cmを超えた2〜3個の肝細胞癌および4個以上の多発肝細胞癌がTACE/TAEの適応となっている。
当院でも、肝細胞癌に対して、基本的に科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインの治療アルゴリズムに沿った適応で、切除不能肝細胞癌に対してTACEが施行されている。
近年、選択的TACEで使用されている、マイクロカテーテルの先端に、バルーンを有する一時的な血管閉塞に用いるオクリュージョンマイクロバルーンカテーテルが市販された。本オクリュージョンマイクロバルーンカテーテルによる一時的な肝血流遮断状態では、肝臓内の血流動態の変化を利用して、より効果的な抗がん剤や塞栓物質の注入が可能なmicroballoon-occluded transarterial chemoembolization(B-TACE)が施行されつつある。B-TACEにより、肝細胞癌に対して、良好なLipiodolの沈着が得られるとの報告があり、これにより、良好な局所治療効果が予測されている[3,4,5]。しかしながら、その治療効果や有害事象に関する報告は、我々の検索した範囲では、認められない。
本研究では、切除不能肝細胞癌の治療成績向上のために、切除不能肝細胞癌症例を対象に、マイクロバルーンカテーテルを使用した肝動脈閉塞下の動注化学塞栓療法(B-TACE)の安全性と有効性を後視法的に観察研究することを目的としている。
また、本治療法を施行した患者様の治療経過や有効性に関する臨床研究の審査もお願い申し上げます。研究における倫理的配慮は、個人情報の取り扱いには、十分に配慮いたします。
判定 承認 本報告は全員一致で承認された。
申請者 精神科医長 後藤 慎二郎
2013−017
統合失調症患者のドパミン過感受性精神病に対するアリピプラゾールの有効性に関するオープン試験
申請の概要
医療行為及び医学研究の目的
統合失調症患者のドパミン過感受性精神病に対するアリピプラゾールの有効性に関するオープン試験
抗精神病薬による治療によって、十分な改善を示さない統合失調症患者は約50%に上ることが言われており、一旦寛解状態に至っても、5年で約80%の患者が再発する。このような精神病症状の持続や不安定性にドパミン過感受性状態(Dopamine Supersensitivity Psychosis: DSP)の関与が指摘されている。この状態は高力価・高用量の抗精神病薬治療によって惹起され、ドパミンD2受容体のアップレギュレートが関与しているものと強く推定されている。DSPは臨床的には離脱精神病や薬剤耐性の持続精神病にて観察されるが、現在のところ有効な解決法は存在しない。
アリピプラゾールは臨床で使用できる唯一のドパミン部分作動薬であるが、安定した外来患者への治療によって、他剤に比して再発が少ないことが報告されている。一方で同薬への不用意な切り替えはしばしば陽性症状の悪化を引き起こすことも知られている。これらは共にDSPに関係した現象と推測されており、すなわち前者はアリピプラゾールがDSPを形成しない薬剤であること、また後者はDSPの状態下にある患者にはアリピプラゾールが刺激し得ることを示唆している。
そこで、今回DSPの状態にある統合失調症患者に対して、ごく少量の同薬を上乗せし、緩徐な切り替えを行うことで、DSP状態が安定化されることを検証することを目的とした、臨床試験を行いたい。
判定 承認 本報告は全員一致で承認された。